適応障害とは?診断や症状、主な治療法などを解説します

「適応障害」という言葉を聞いた事がある方も多いと思います。
当時皇太子妃であった雅子様がこの適応障害と診断されたことで、フレーズだけでも知っている方もいるのではないでしょうか。

ですが、実際どんな症状で適応障害と判断されるかご存知の方は少ないと思います。
ここでは、言葉だけでも知っている方の多い「適応障害」について詳しく解説していきます。

そもそも「適応障害」とは何か?うつ病とどう違うの?

そもそも適応障害とは何なのか?この点について最初は紹介します。
適応障害は「ICD-10」という世界保健機関(WHO)分類したものによると
「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されています。

ざっくり解説すると、以下のようになります。
「何かしらの原因で精神的・肉体的に問題が出て、日常生活に支障が出る」これが適応障害の定義です。
どこかうつ病と似ているように感じる方もいるかもしれませんが、「何かしらの原因」というのがポイントです。

適応障害というのは、問題が発生する原因がはっきりしているということです。
逆に言えば、ストレスの元がなくなれば症状が改善するという事もできます。
それでも症状が続く場合はうつ病と診断される可能性があります。
⇒ うつ病のページはこちら

先ほどの雅子様の場合は、育児や世継ぎ問題などが原因と言われていますが、
適応障害であれば何かしらの原因が特定されていたかもしれません。
(「産後うつ」と考えている専門家もいるようなので、そもそも適応障害ではない可能性もありますが…)
何をもって原因とするかは人それぞれです。

大切な人との死別
夫婦関係(人間関係、性的関係など)
生活環境
災害病気によるもの(慢性的な痛みや長期的な治療が必要な症状など)

ある出来事や起きた事に対して、
何とも思わない人や嫌だと感じていても尾を引かない人、気にして苦痛に感じてしまう人など様々です。
ひとつの良い例が仕事で言えば昇進です。端から見れば喜ばしい事、昔はお赤飯を焚いてお祝いしていたくらいですが、
不景気な世の中、責任ややらなければいけない事などストレスが増え、本人にとっては非常に苦痛と感じるかもしれません。
「喜ばしい事なのになんで?」と感じる人もいるかもしれませんが、当の本人がその立場や環境に適応できない、
苦痛であれば、結果的に適応障害となっても不思議ではありません。

このように、人によって苦痛に感じる事から、死別や災害など、どの人にとっても不幸であったり苦痛と言える出来事はあります。
苦痛の原因によって引き起こされる症状がどのようになったら「適応障害」と考えられるかもあわせて紹介します。

具体的にどうなれば適応障害と診断されるか?

この点に関しても世界保健機構(WHO)のICD-10で定義があります。それは以下のようなものです。
「発症は通常生活の変化、ストレス性の出来事が起きて1カ月以内、そのストレスが終わってから6カ月以上症状が持続することはない」
後半の「6か月以上症状が持続する事はない」という部分は、
日常的にストレスの原因になっている事が起これば6か月以上持続する事になります。

例えば、仕事の人間関係などの場合、出勤するだけでストレスの元に触れることになるので、
異動や対象となる人が職場を去らない限りはストレスが終わる事はありません。
仕事の人間関係などの仕事が関係している場合、
休日や仕事から帰ってきた後、状態が良くなるなら適応障害と判断できるかもしれません。
うつ病の場合、帰宅した後や休日の仕事のない日でも、気分の落ち込みや不眠、興味の薄れなどの症状が見られます。
その場合は、うつ病の可能性があり、適応障害とは区別されます。
⇒ うつ病のページはこちら

適応障害の症状はどのようなものがあるか?

適応障害の時の症状は、原因となっているストレスと同様で様々です。

精神的症状:不安、気分の落ち込み、イライラ、怒りっぽい、眠気など
身体的症状:吐き気、下痢・便秘、発汗、ふるえ、めまい、胸のしめつけ・ドキドキなど

これらの症状により、以下のような事が起こりえます。

  • 怒りっぽくなり、ささいな事でのケンカが増える
  • 仕事や作業に集中できない、ぼーっとしたり、勘違いや物忘れが増える
  • お酒の量・タバコが多くなり生活環境や習慣が乱れる

適応障害の場合、どのような治療がされるか?

最良な方法は、ストレスと元を取り除く事です。

「それはそうでしょ」と思うかもしれませんが、
もしその原因となっている事がハッキリしていない場合、それをはっきりさせる必要があります。
それがあいまいな場合はうつ病の可能性もあります。ストレスの元を取り除けるなら取り除く。
ですが、それが無理なケースが多いというのが実際です。

その場合は、そのストレスの元になっている出来事などに対しての対応の仕方を変えていくようにします。

そのことに対するとらえ方を変える

少し難しい言葉を使うと「適応力を高める」ことです。

  • 物事に対しての受け止め方などを変える
  • その出来事に対しての解決策を考える
  • その症状が起きた時の対処方法を考える

といった方法があり、過去のトラウマや家庭環境などにより、
特定の事に対して過敏に反応、ネガティブにとらえたりしているケースがあります。

その捉え方の視点を少しでもずらすだけでも変わってくることもありますし、
場合によっては、職場の方、おうちの方などに協力してもらう事で解決につながるケースもあります。

適応力を高めることで、ストレスと上手く付き合う事で人間関係などが改善した、
ストレスに強くなったなど精神的に強くなるケースもあります。

ですので、適応力を高める事は非常に大切なアプローチであると言えます。

薬物療法

薬の服用により、症状を軽減させることが可能です。
あくまで症状を軽減させ、日常生活などに支障が出ないようにするものなので、根本的な治療にはなり得ません。

ですが、症状が改善され、前向きに考えることができれば、
先ほど紹介した適応力を高めるアプローチがしやすくなるかもしれませんので全く意味がないわけではありません。
このように、診察時での問診、そして薬物治療をあわせて適応障害の治療を行っていきます。

辛い時、苦しい時はひとりで抱え込まないでください

自分の力で解決できるならそれに越したことはありません。
ですが、そうしようとしたり、「弱音を吐いてはいけない」などと我慢されるケースもあります。
時にはそうする事で、ストレスとの付き合い方、物事の考え方を学ぶ事もあるでしょう。

ですが、それが長期間続いて生活に支障をきたしたり、友人や家族に相談しても
「そんな事で悩んでるの?」「そんなのよくある事だよ」などと言われたりして理解されないといった事もあるでしょう。

結果、自暴自棄になって、近しい人に当たったり、
人によっては人間関係の悪化などで仕事を辞めてしまったりする方もいるかもしれません。
場合によっては、うつ病などにより長期的に生活に悪影響、仕事をやめざるを得ないといった事が起こるかもしれません。
そうなってしまう前に、ひとりでずっと悩んでいたりせず、医療機関にご相談ください。

誰かに話そうとする行為は、人に何かを伝えようとする行為なので、自然と自分の考えが整理されます。
さらに自分でも気が付かなかった問題やストレスの原因が明確になり、
生活や仕事との付き合い方、人間関係などを見つめなおすキッカケになるでしょう。

適応障害の改善だけでなく、今後の人生をより良い方向にしていく事もできるかもしれません。
「医療機関にかかる」というと大それたことのようにも感じる方もいると思いますが、
一人で抱え込んだりせずお気軽に一度ご相談ください。

お悩みの方はお気軽にお電話ください

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